再びメトロあるいは、アールデコと Windows8 と iOS7

ぼちぼちとmetro stryleについて書き綴ろうと思っていたら、WWDC 2013でiOS7の発表があったのでそれに絡めて…と言いますか、iOS7で噂されていた「フラットデザイン」が気になって、Windows 8 のように「影なしのアイコンデザイン」かつ「グリッドシステムに固執したユーザーインターフェース」だったらどうしようか、と心配していたところなのです。本来のフラットデザイン、グリッドシステム、メトロ(地下鉄の標識)のデザインについては、そろそろ Metro Design について考えてみよう – Moonmile Solutions Blog あたりで書き綴っているので、それはさておき。いや、「意匠問題」のところと「コンテンツ主導」のところは関係がありますが、ざっと、1時間ほどで書き下してみたいと思います。

iOS 7 Release Date

Apple iPhone 4S

いわゆるホームページ(だっけ?)を眺めると、アイコンがフラットになっているように見えますが、もともとiOS 5,6 のアイコンはデフォルトでグラスよりが掛けられているのと、背景に影がつくようになっているので、iOS 7の処理がそれを外しているだけです。XCode 5 で作れるコントロールも、(おそらくは)XCode 4と同等のもの(下位互換)は用意されるでしょうから、OS が担う標準コントロールの処理が変わった、というところです。なので、いままでのアプリをそのまま iOS 7 に載せれば、「フラットデザイン風」になる可能性は高いかと。そういう意味では、Windows 8 のデザインの追随だったり、既に Android に見られるようなインターフェースがあったり、jQuery UI で作れるような Web サイトのデザインだったりの、寄せ集めな雰囲気は否めません。なので、先駆者としての Mac デザイン?はさておき、ユーザーのニーズに応えました、ってところでしょうか。Microsoft であれ Apple であれ資本主義を元にする会社であるので、本来のデザインの先進さやユーザビリティよりも発売後の一般受けが優先するのでしょう。もちろん、卵と鶏の関係になるので、どちらが先という訳ではないのですが、この「フラットデザイン」に関しては(それが、本来のフラットデザインではないにせよ)、Microsoft よりも Apple のほうが一歩リードしたままのように見えます。

■デザインの歴史は繰り返し、アールデコへ

Windows 8 のメトロデザインが発表された頃から感じていたのが「アールデコ」の匂いです。美術史を紐解けば、アールヌーヴォーの後のアールデコ、アールヌーヴォーがミューシャが代表する(とはいえ、ミューシャ自身はアールヌーヴォーの後期)「ごてごてとした装飾」の時代から一転、機能的なデザインのアールデコへと移ります。流線型を代表とする「機能美」のデザイン感覚ですね。

現在において「デザイン」という用語や用法は、美術的/芸術的な視点よりも、機能美のような「そぎ落とす」という意味で使われることがあります。あるいは、ユーザーが何かを使うときに「それが何であるか」を主張するための装飾を付け加えることを意味しています。前者は、ソフトウェアの設計であったり(ユーザーインターフェースではない機能設計とか)部品の生産効率のためのデザインという形で使われ、後者はノーマンなどの言うユーザビリティのデザインを示しています。他にも、アニメのロボットのデザインのような「架空ではあるが、それらしいデザインを組み込む」というスタイルや、デコレーションされた携帯のような「過剰的な装飾」である「過剰」な部分(≒自己主張?)をしたデザインという言い方もあります。

アールヌーヴォーの椅子の足には、いわゆる「装飾過剰」な猫の足が使われます。マッキントッシュはどちらかと言えば、アールデコの機能美の世界ですね。「スタイリッシュな」という形容詞が使われます。この椅子に関していえば、どちらが、優れているという訳ではありません、どちらもその時代の「ニーズ」にあわせた、あるいは、その時代のニーズに合ったものが残った、あるいはニーズを創り出した椅子になり、歴史的に言えば、どちらも「優れて」います。

アールヌーヴォー自体、それ以前の写実主義からポスターへの移り変わりなど前史があるわけで、前史があるがゆえのその反動的なデザインの仕方と言えます。なので、時代的には揺り返しが来るし、昨今ミュシャ展がずっと開かれている(商業的に一般ユーザーに受け入れられやすい。あるいは版権的にやりやすい?)のもあり、そういう大衆の流れがあります(本来は、大衆/分衆という仮想を動かすわけですが)。

ディスプレイの解像度とCPUのパワーが有り余ってきて、3Dのアイコンが過剰になってきたり、場合によっては3Dアイコン自体がリアルタイムの3Dレンダリングで動いたり(ということはなかったのですが)という未来もあったわけですが、「装飾」が「過剰」であると判断した Windows 8 のデザインチームが「メトロスタイル」を打ち出したと同様に、Apple のデザイン部門は、市場のニーズにあわせて「フラットデザイン」?に舵を切った、と言えます。なので、どちらが UI 的に優れているのか(3Dデザインとフラットデザイン)というのは「商業主義」の範疇の議論でしかありません。

■フラットすぎるWindows8と3D寄りのiOS7

私が Windows 8のデザインで解せないのは「フラットすぎるアイコン」と「青紫の利用」です。タブレットを主体とする(元は Window Phone だし)Windows 8 は、マウスポインタをかざしてアクションをする「だけ」ではダメなので、なんらかの「視覚的な」アクションがないと、それはボタンと分かりません。まあ、所詮「道具」ですから、慣れればなんということはないのですが(実際、私はスタート画面のアイコンは押さずに、すべてキーボード入力の検索になっています。Surface RTでは、自作アイコンを作って、それと分かりやすく区別化しています)、

 

鈴木英人か、わたせせいぞうのデザインですか?と思ったのは私だけ…ではないハズ…って80年代ポップスのデザインですね。覚えていますか?

装飾を切り詰めてコンテンツに集中するためのデザインかつデザインセンスとされていますが、かなりあやしいところがあります。

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iOS6 の次には、長岡秀星が突き詰める「スーパーリアリズム」(当時は、エアーブラシで多焦点画像を描いていた)と思いきや、まあ、ちょっと3D感を残したフラットデザインな訳で、意味合いてきには Winodws XP の頃に流行ったフラットボタンコントロールの発想に似ています。ボタンが出っ張っているのではなくて、ちょっと凹みぎみのボタンですね。ちょうど iPhone のホームボタンに似ています。

あと気になるのは「青紫」という色なのですが、12色環の「赤紫」と「青紫」を使ったということことなのでしょうか?iOS 7では、iTunesが赤紫色になっています。紫自体が不安色なので、ちょっと気になるところです。

 

■機能については

Apple、「iOS 7」を発表――2013年秋にリリース – ITmedia Mobile を参照ってことで。iOS 7 的には XCode 5 を入れて試してみないといけない。今度はネットワーク廻りもきっちりと抑えていきたいので。

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再びメトロあるいは、アールデコと Windows8 と iOS7 への5件のフィードバック

  1. konica のコメント:

    確かにデザイン、いやプロダクトという部分では、
    またミッドセンチュリーやら古き良きデザインの戻るな~と考えたり。
    自分なりに何んなん?と考えると人間の本質が変わってないとか。

    メトロデザインは個人的には好きですけど、
    開発者よりに考えるとかなり二極化しますしね。
    そんな事をたまには書いてみるテスト

  2. masuda のコメント:

    「個人的に好き」とは知らなかった Σ(゚Д゚;
    WWDC のデモではあまりフラットしなかったのですが、API ドキュメントを見てると orz ぐらいにフラットしているんですよね。まあ、従来アプリを作っている人もいるし、すべてが移行するとも思えないので、多様性を期待なところです。
    実は開発者としては、フラットであろうと3Dであろうと「標準コントロール」を使う限りどちらでも労力は変わらないのです。むしろ「テキストボックスでエンターキー移動」のようなユーザーのアクションが変わるほうが問題で、それは既にスワイプやらページビューの移動やらで変なことになってます。

  3. mucchi のコメント:

    フラットデザインはアールデコではなくバウハウスの系統なのでは?

    • masuda のコメント:

      コメントThxです。
      WWDC2013以前に、Windows8の「メトロ」と何らかの美術用語が組み合わされなかったので、おかしいなぁと思っていたのですが「バウハウス」ですね。確かに。
      で、Windows8発表時の記事も良く探してみるとありました。
      http://blogs.jp.infragistics.com/blogs/kazuma/archive/2011/09/26/build.aspx
      http://www.netmagazine.com/features/10-things-you-should-know-about-designing-windows-8
      http://ascii.jp/elem/000/000/304/304699/

      「フラットデザイン」がITのWEBデザイン(ブラウザでの閲覧?)にのみ関係したものが多く、他業界(特に美術史、建築史)と一緒に語られる記事が見当たらなかったので、それがMicrosoft独自のものなのか、他に源流があるのか私には分からなかったのです。
      http://wired.jp/2013/06/13/ios7_redesign/

      MicrosoftとAppleのデザインがバウハウスが元ならば、似たデザインが出てくる(かつ将来的にも似たものになる)のも当然で、それぞれのUIはバウハウスの解釈の違いとも捉えられますね。なるほど。

    • masuda のコメント:

      追記
      時期/場所的にシュタイナーに絡むところがあるのなと思って調べてみると影響ありそうですね。一時期、シュタイナー教育にハマっていたことがあるので潮流として興味深いところです。

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