カンバン方式

午前中、図書館でトヨタ式カンバンの本を読む。他7冊程度斜め読みをしてきたのだが、正式なタイトルは忘れた。

思うのだが、心理学の本やら方法論の本やらを読み時は、類似の本を立て続けに4,5冊読むのが良いのではないでしょうか? というのも、一冊だけ読んで全体を分った気になっても困るし、周りをみていけば色々な視点があるわけで。ひとつひとつを研究していくのであればいざしらず、ビジネス書として読む(あるいは読み捨てる)のであれば、「同ジャンルを短期間に数冊」のペースで読むと、短期間に類似比較ができて良いと思うわけです。まあ、そのためには速読なり斜め読みなりをしないといけませんが。
昨今IT業界でも、かんばん、改善、気づきがキーワードになっていますが、このあたり

 * 何のために何をするのか?

の目的がハッキリしないと、議論だけが先行して実務が追い付きません。
これは「トヨタ式~」の本でもそうなのですが「ムダ、ムリ、ムラ」のところで、「ムダ」を省くところに力を入れていますが、「ムリ」「ムラ」の話は1頁弱しかありません。いえ、1頁弱でもあるのがまだいいほうで、ムダだけ省いて、ムリの話は1頁もない本もあります。

「ムダ、ムリ、ムラ」の話を簡単にまとめると、

 a) 工程を見直してムダな行動を見つける。改善して効率化する。JITやTOCがこれに当たります。
 b) 改善した工程/ルールを実行します。誰かにムリ(過負荷)がかかっていないか調べます。
 c) 工程が忙しかったり/暇だったりしないようにします。仕事の平準化をします。

a)の話はすごく多いです。他の本にもたくさん書いてあります。ITの導入、ソフトウェア開発の効率化、電子メールの利用、大量ストレージ、セキュリティ/監視システムの効率化なんてのは、みなこの a) のムダを省くところから始まります。まあ、IT=計算機と考えれば、無理からぬことで、昨今のCPUと同様に高速化=効率化=コスト削減に直接寄与するところです。
# この「コスト削減」、本当にコスト削減になるのかは、また後日の話で。

b) の「ムリ」の話ですが実は2つあります。
 b-1) 誰かに仕事が重なっていないか。無理がきていないか(過負荷)
 b-2) その効率化/改善は実行可能か?(実現可能性)

「見える化」の話は、a)のムリを探すところにも有効ですが、プロジェクトの個人の進捗状況、にこにこカレンダーは、この b-1) の過負荷にあたります。TOC のボトルネックの話、レバレッジの強化なんてのは、a) と b-1) の組み合わせです。

さて、問題は、もうひとつの b-2) 実現可能性です。
はたして、その改善案は「実現可能なのか?」

この対応として「トヨタ式~」の本では(いや、松下幸之助の本だったかな?)、ぐだぐだ言わずにやってみる、ことを推奨しています。まぁ、確かに議論/愚痴よりも1「やってみる」のは大切なのですが、やれるかどうかぐらいの判断はあったほうがいいと思います。

この実現可能性のところについては

 * 人によるロールプレイングゲーム
 * モデルによるシミュレーション

が有効だと思うのですが、このあたり言及されていません。

もうひとつ、見落とされている c)「ムラ」ですが、仕事の緩急の度合を平均化しようということです。つまり、暇のときは仕事がない状態、忙しいときは徹夜でお仕事、というの止めるという話です。当然、業種によっては「繁忙期」というものがあるので、完全に平均化できるわけではありませんが、極端な仕事の緩急は先の「ムリ」にも重なり、機会損失や人員の確保によるコスト増加にかかわってきます。

余談ですが、日本の会社の決算期は3月末に集中しています。そのために上場した株式会社では決算期に売り上げをまとめようとして3月末に向けて仕事の取り合い/商品の売り合いが発生します。自然と競争するわけです。これを、3月末以外に決算を行ったとしましょう。そうすると同業他社との競合をしないために、多くのメリットが発生します。

 * 3月末に向けた、仕事/商品の安売りをしないで良い。
 * 税理業務、会計業務が、税理士/会計士の閑散期を利用できます。
   (安くはならないが暇なので相談がしやすい)

この話は、どこかの税理士さんのページに書いてあったものですが、決算期をはずす=世の中の「ムリ」に重ならないようにする、のもひとつの知恵です。

この「ムラ」の問題ですが、次で言及されています。

 * カンバンの「整流」という概念
 * TOC(制約のセオリー)のリードタイムの問題
 * 待ち行列の計算(m/m/1行列など)、ポアソン分布
 * オブジェクト指向の「粒度」
 * 流体力学のレイノルズ数、粘度
 

さて、ひと巡りして「類似の本を~」の話に戻りましょう。
JITやTOCひとつだけだと、待ち行列や粒度の話に広がりません。逆にこれだけあると、何を「ムラ」のところに云わんとしているか分かるのではないでしょうか?本質という意味で。
ちょっと思い出したので老子の最初の章から引用しておきます。

故常無欲 以観其妙 常有欲 以観其徼
此両者 同出而異名 同謂之玄 玄之又玄 衆妙之門

この「妙」「徼」「玄」さらに「玄」の関係図が、先の「類似の本を~」になります。
ひとまず、長くなったのでこの話は後日。

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