ザ・プロフィット

目次なんかは↓を参照。
http://katsuhito.mitsumorike.com/archives/2004/10/_j.html
http://noukanohon.blog40.fc2.com/blog-entry-17.html

最初に言っておきますが(IT業界の方には分かっていると思いますが)、23番目の「10倍の生産性を生む源 <デジタル利益モデル>」ってのは楽観的過ぎです。確かにDELLのサンプライはプッシュ型(売り手が製品を顧客に合わせて作る)からプル型(顧客が商品の組み換えを選択できる)に変更して成功をおさめたものの、今となっては他の会社も同じことをやっているので他のモデルに比べると一時的な利益モデルになります。本書にも書いてあるとおり、その他は大企業(ある程度シェアのある企業)が勝つためのモデルであって、その他の中小企業の利益モデルはこの23番目の「デジタル利益モデル」だ、と明言しているわけで、そうなると中小企業に利益モデルは通用しない、ということになってしまいます。また、どの業界も再編が進み巨大化しています。

で、それを踏まえた上で本書を手に取ってよかったと思うのは、

* 「利益/利潤」という明確な目標がある。
* 仕組みの中に「利益」を織り込んでいる。
* 本を2冊ずつ読む/紹介する理由が書いてある。
* 手書きの図があってモデル=イメージとして分りやすい。

最初の2つはドラッカーの言う「企業とは永続に存続することを目的としている」にあたるもので、株式会社の目的が利益を出すこと、株式公開することは利益をもっと集めること、にあたるもので「ビジネス書」として明確です。また、会社なり経営なりを行う上で、利益を生み出す仕組みを明確にして、どれだけの利潤が出ているのか(売上、粗利、固定費、変動費等)を「お金」という一元的な価値を測定できるようにしています。なので、この会社はどの利益モデルで「お金」を得ているのだろう、という形で会社の1つの視点を持てます。逆にいえば、利益モデルがない会社は危うい、どこからか変な流入/流出がある、ということですね。

このあたり、会計学…とまではいかなくても工業簿記の基礎知識があれば、原価計算と固定費/変動費/間接費の関係、売上と原価の関係までが理解できます。このあたり「何でここの会社/人はこんなことをするのか?」を「お金」の視点で見るときに重要です。

# 勿論、世の中「お金」以外の基準もあるわけですから、全てが利益モデルに利益モデルに合致するとは限りません。例えば萌え産業とか。ですが、マクロ経済的に考えたとき、ある程度の市場の大きさ=様相される顧客の数があれば、このモデルが適合していきます。つーか、それが社会学で言う「モデル」なんだけどね。例えば、ゲーム業界が違法コピーによって崩壊しかかっている(と思う)のであれば、ゲームの販売という利益モデルが変換されるべき時期にあるのではないか?無料のMMRPGがこんなに大量に出まわっているのは何故か?アフリエイト料金を支払ってもamazonが儲かるのは何故か?WEB産業は広告以外に収入源はないのか?そもそも宣伝費はどれほど必要なのか?など考える元ネタになります。

「2冊ずつ読む/紹介する」理由ですが、本を読んだ気になる、わかった気になる、または、その本の思想に縛られてしまう、のを回避するためです。当然「ザ・プロフィット」自体も例外ではありません。この本が「ザ・ゴール」とは違うのは(ジャンルは同じなのかな?同じダイヤモンド社で装丁が似ているんだが)ほかの書名が出てくることです。他の本を読み、「ザ・プロフィット」を読み、また他の本を読む、ということで相互作用を期待しているものと考えられます。
まあ、これはコンサルティング特有の「道具立て」なんだけど、「コンサルティングの道具箱」なんかを読むと分ります(と、メタ的に他書を勧めてみる)。

さて、最後の図のお話ですが、各利益モデルについて何枚かの手書きの図が書いてあります。筆ペンで書いたような図ですが、これがイイ感じですね。孫子が出てくるところからおそらくチベット、中国の老師が弟子に語るというイメージでしょうか。難しいことを言わず、簡単な図と簡単な言葉で悟りを開く、開眼するという感じを増幅させます。これもコンサルとして重要なもので、コンサルの仕事って相手にやって貰わないと意味がないのです。コンサルはクライアントの上司ではありませんから、あの手この手で説得/動かすようにするわけです。そのためには重要な制限があります。

「相手は理解できるものしか、理解しない」

というものです。当然ですが、よく分らないけどこれはうまくいくからという押し付けでは人は動きません。動くことができません。勿論、コンサルによってはそういう人もいるかもしれませんが(多いと思うよ、本当は)、納得して動くにせよ、納得せずに動くにせよ、利益/不利益を蒙るのはクライアントなわけです。コンサルはコンサル費用を貰うだけです。そう、ここにコンサルの利益モデルがあります。

コンサルの話はさておき、ええと、会社の利益モデルもさておき、昨日「面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則」を立ち読みして、いいことが書いてありました。

「会社の寿命よりも、個人の寿命は長い」

なるほど御尤も。

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