この日経新聞のポストに関して、脊髄反射的に「土管が賠償責任を負うなんて」という意見が付いてるが、考え直したほうがよいです。この問題は単なるインフラ=土管として捉えているのではなくて、契約上「反社」としてわかっているところと契約をした上で、警告を無視して(米クラウドウェアじゃなくて日本営業所なのだろうけど)ずるずると契約し続けていた、というところが大きな問題です。
賠償金額は合計5億円(四社が各社1億2650万円)なので、ほぼ原告通りの金額が通ったと思われます。ただし、月間3億アクセスあることと海賊版の頒布という「幇助」が重なると、実際の被害額はさらに多かったはずですが、この場合「土管」のように見えるインフラ業者も敗訴する場合がある、というところが重要です。
今回の判決のその前に考慮する事柄
海賊版については、昨今の中国のあれこれも含めて、国内ならばなんとかなるものの国外に出てしまうと著作権の扱いが異なったりしてかなりややこしいです。このややこしいところを利用して「漫画村」のような海賊版配布サイトが発生したわけですが、その前提を踏まえておく必要があります。
- 「漫画村」のような直接的な海賊版配布サイトとその主催者
- 海賊版サイトの運営者と契約をしている、ホスティングサイト
- 海賊版サイトに接続する中間通信業者(プロキシサーバー)
- 海賊版サイトと契約する通信事業者
といういくつかのパターンがあります。このほかにも、海賊版サイトを裏で運営するための WEB サイトの請負業者や保守業者というものがあります。このあたりは、裁判沙汰にはなっていませんが、「反社条項」に照らし合わせると、芋づる式に警察に引っ張られる可能性があるので会社としては注意が必要です。

海賊版配布サイトとその主催者
まずは、海賊版配布サイトとその主催者は、あきらかに犯罪行為となるので、即捕まることになります。すでに刑事処罰を受けた人が出所しているぐらい時間が経っているので、犯罪であることはいまとなっては明らかなことです。ただし、判決として「懲役3年・罰金1,000万円」となるので、出版社等の想定被害総額(200億円程度と言われる)から見ると雀の涙ほどでしかありあません。これは民事訴訟で争うしかありません。
「漫画村」に関する損害賠償請求事件の判決言渡について | ニュースリリース | KADOKAWAグループ ポータルサイト https://group.kadokawa.co.jp/information/news_release/2024041801.html
これ、主催者に請求しても支払い能力がない(広告収入はあっただろうけど、果たしてそれが200億円に達するかわからない)ので、民事では 17 億円の賠償となっているようです。
ホスティングサイトの責任
現時点で「ホスティングサイト」の責任を問うときに、CDNのクラウドフレア社の件しかでてこないので、検証が難しいのですが、過去の例をみるとホスティングサイトにも責任があります。ホスティング会社の場合、コンテンツ業者との契約が発生しますがコンテンツの内容が問われることがあまりありませんでした。しかし、性的なコンテンツや反社的なコンテンツがあるとホスティング業者自体が廃業に追い込まれます。良い例としては FC2 があります。
企業コンプライアンスで次々と性的コンテンツ(静的ではないです)や違法動画を流すことをやめるホスティング業者が多くなっている中、 FC2 はそれらを野放しにしました。というか、経営的にコンテンツの内容を問わない、という形を貫きました。コンテンツの内容を問わないという点では「表現の自由」を支えることにはなるのでしょうが、違法コンテンツの配信をそのままにしておくという「犯罪幇助」に引っ掛かってしまいます。
FC2の法的責任:著作権侵害コンテンツを放置中!米国のDMCA(デジタルミレニアム著作権法)プラットフォーム責任の観点から整理|アメリカ移民ケニー小倉の裏ログ https://note.com/onoshin_digital/n/n816a97c3e878
なので、単なる「場」としてのホスティング業者であっても違法コンテンツの配信を野放しにするわけにはいかないのです。
中間通信業者の例
違法コンテンツは電子的な配信がなされるため直接ユーザーと繋がっているわけではありません。途中に中間通信業者(プロキシサーバー等)を通ります。これは、順法コンテンツだとしてもかわりません。
このあたりを KADOKAWA が規制しようとした事実がありますが、その規制自体は違法です。
発端としたは「漫画村」のサイトに繋がる経路(IPアドレス、DNSサーバー)を制限しようとする法案を国会で通そうとましたが、失敗しています。いわゆる DNS によるブロッキングです。
しかし、これは「通信の秘匿」という意味で違法であり、却下されています。たしかに違法である漫画村サイトに対して DNS ブロッキングを行えば一般ユーザーからは接続はできなくなります。しかし、この DNS ブロッキングの方式は、先の順法サイトへのブロッキングも可能になるという法的な問題が発生してしまいます。
漫画村のような違法サイトであるということを誰が判断するのか?という問題です。
DNS ブロッキングが通ってしまうと、ときの政府の思惑で「通信の秘匿」が侵される危険性が高いです。実際、中国では金盾でブロッキングされているわけですから、技術的には可能ですよね。抜け道としては VPN で抜けてしまっているのですから、これも違法サイトだけブロックするわけにはいかないことは明白です。
「漫画村」ブロッキング――誰が、どんな経緯で動いたのか – Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/feature/1039/
というわけで、単なるデータを媒介する形での中間通信業者は、この件に関しては違法性はありません。逆に警察や政府が DNS ブロッキングを要請してきたとしても跳ねのけるだけの法的根拠があるというわけです。
まあ、実際のところはどうなのかわかりませんが。NTT が動いてしまった具合ですから。いわゆるときの忖度ですよね。
海賊版サイトと契約する通信事業者
いわゆる「土管」=インフラ業者としてのクラウドフレア社のような場合はどうなるのか?というのが今回の判決です。まず、違法性の伝播としては、今回の反社と契約しているか否かにあります。当然のことながら契約書自体に反社条項が入っていれば、反社(この場合は漫画村の経営者)と契約を結ぶこと自体が違法です。
当初、クラウドフレア社は「違法な契約者かどうかがわからない」ことを主張してきましたが、これは出版社による再三の警告(あるいは通告?)により「違法性が高い」ことは認識されていたとみるでしょう。これを放置したことにより「犯罪の幇助」という判決に至ります。
だから、ある意味では契約時点ではわからないのは仕方がないです。実際に、契約した後に反社になるかもしれないので、契約時点あるいは契約後自体のそれは問われないはずです。しかし、契約している途中で客観的になんらかの形で反社としてわかった場合には、契約を見直すことをしなければいけません。これは、法的というよりも、今回の判決のように裁判に負けてしまうからです。会社として不味いですよね。
金額的にクラウドフレア社にとって5億円という金額は大したことはないでしょう。しかし、今後、コンテンツ業者が訴えた場合に、同じように敗訴になる可能性が高く、海賊版サイトとの契約の見直しが大量に発生する、というところがこの判決の影響になります。
さらなる波及として
おそらく、問題は Meta 等が広げてしまっている違法広告に訴訟が及ぶ可能性が高いです。Meta や Google は、違法広告をそのまま流しています。しかし、それは広告主の問題であって「土管」としての Meta や Google には責任がないという判断を各社がしていますが、これがひっくり返ります。反社であるとわかっていて契約をし続けた場合には、今回のクラウドフレア社のように敗訴する可能性が高くなります。ですから、Meta や Google は広告主と契約を結ぶ場合に、広告主が反社であるか否か、広告主が違法であることを警告された場合にそれに対処しなければいけないという義務(とリスク対処)が発生します。
実際のところ、ネット広告の出品は自動化されており、Meta や Google 自身がほとんど関与していません。「私は反社ではありません」のチェックボックスぐらいでしょう。逆に言えば、その関与していないことが今回の判決において問題になるわけで、次なるは違法広告の問題に発展するでしょうね。原告が誰になるかが微妙ではありますが、何かの集団訴訟にはなると思われます。
関連法案
この手の話は、電気通信事業法の第三号事業者とプロバイダ制限責任法の両方を把握しておきます。前者はホスティング等の通信事業者(仲介的に掲示板提供とかツイッターのようなミニブログとかも含まれる可能性あり)が守るべき義務と、後者は何か訴訟がおこったときに無限責任ではなく有限であるという意味で責任範囲を規定するものです。片方だけ知ってても片手落ちなので、両方知っておいてください。
電気通信事業法における第三号事業者とは?自社の分類を把握しよう! – オーリック・システムズ・ジャパン株式会社 https://www.auriq.co.jp/blog/kaiseidenki-daisango-category/
プロバイダ責任制限法とは|削除請求・開示請求わかりやすく解説 | 誹謗中傷弁護士相談Cafe https://www.fuhyo-bengoshicafe.com/bengoshicafe-260.html

























