GBC を見て「重力」な機構を考える

LEGO TECHNICからくり部屋 レゴ GBC 二年間のまとめ
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海外で反響が…ってのを見て、このバスケットの部分は確かパクリだよ…と思っていたら本人でした、という話。玉入れのところを以前みて、注目しておりました。

自分のほうは、OpenCV で画像解析、プチロボを使って6軸のアーム作りの組み合わせをしたいところで、これに .NET Micro を組み合わせる予定です。ソフトウェア関係は長年やっているので OK なのですが、機器関係がまるで駄目で、多少の半田付けやプラモデルレベルの集中力が失われつつ…な状態なのですが、これを見て再び、絶賛挫折中の6軸アーム作りを頑張ります。

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どれを見ても飽きないのですが、飽きずにみていると、分かるのが、

  • ボールが途中で滞っていない。
    • ボールを送るスピードが同じである。
    • あるいは、若干初速が遅くて、最後が早い、という作りになっている。
    • 生産系の TOC みたいで面白い。
  • 回転動作を、左右やカムの動作に切り替えている。
    • 機械工学の基本なのだけど、原子力屋さんの私はやらなかったのよねぇ。
  • ボールを送るのに、「重力」を活用している。

なところです。生産ラインの設計をしている方には当然なのかもしれませんが、ソフトウェア工学の場合には、この手の「製造段階の繰り返し」というのがきわめて少ない(多少の自動生成はありますが、ソフトウェア開発の「製造工程」は事実上、CD-ROM 焼き工程だったりするので)ので、このモーターの回転のみを利用して「繰り返し動作をさせる」ところに非常に興味が湧きます。

品質工学を見ると分かるのですが、生産ラインの繰り返しは、必ずしも「均一」ではありません。いわゆる、歩留りと言われる不良品がでます。この不良品率をできるかぎり「0」に近づけるのが、シックスナインな品質な訳ですが、実は微視的に言えば「歩留り」には至らない(不合格品には至らない)許容範囲のゆらぎを確保しつつ、生産ラインを作ることが、実は「安定的な生産ライン」を作ることと同値になります。

揺らぎ自体は、この GBC のような、完全オートマチックなもの(人手を介在しない)もあれば、途中に人手が必要なものがあります。あるいは、ゴールドラット氏の言う「ザ・ゴール」(だったっけ?)の中にある、機械のセッティングに掛かる時間を考慮する場合もあります。

なので、実は、品質を上げるという中には、経営的な意味も含めて考えると、

  • ライン自体を安定稼働させるシステム
  • ライン以外の揺らぎを許容するシステム

の2つが必要なわけですね。

さて、この GBC を眺めていると、ボールが順々に送られるわけですが「途中で滞る」ことはありません。実にスムースにボールが送られているわけですが、それには安全工学的に非常に重要な「重力」の問題がうまく解決/利用されています。作った彼がそれを意図していた(と私は思う)のですが、先の図のように、重力は常に下に向かって働きます。

ここで、一番最初のボールは「傾斜されている、スロープに沿って、輪の中へ送り込まれます」。ここの「傾斜」が枠に入れる仕組みである。ボールが1個ずつ送り込まれる仕組みです。そして、回転する輪は、少しだけ斜めになり、ボールは外側に落ちないで上に上がってきます。最後に、斜めになった向こう側に穴が開いていて、そこに「重力」が働いて、ボールが輪から出ていくのです。

すごいよ、akiyuky さんは完全に意図的にやっているよッ!!! と偉そうにほめまくりたいです。

この手の「実学」は、おそらくたくさん作った中で培ったものであり、電子回路をたくさんつくると大体勘でコンデンサーや抵抗の計算ができるそうで(そうらしい)、かつ安全用のゲートもそれなりに作れるそうで(確かに、電子回路の本をみると「○○の安全のために、○○を入れておきます」っていう文が頻発するのです)、そのあたりは「職人芸/勘」の世界です。ここでは「職人芸」と言ってしまいますが、実は「実学」としては大学の座学なんて目じゃないんですよね~。ええ、体系的な理論も必要なのですが、モノを作るというのは、目の前の「現実」に向き合うということなのですよ。

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そうそう、画像解析の「実学」も似たところが多くて、動物の「目」を理論的に解決するところからのスタートと、なんとなくマッチングすればOKというコンピュータらしい力技なところもあります。どっちにせよ、「現実」の解決になればよいわけで、識別する対象によって適切なロジック(それが簡易ロジックであってもよい)を満たせば十分「目」に足るということです。顔認識や、テンプレートマッチングなんてのは、力技のほうですよ。

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