夏休みの宿題の読書感想文を星新一ショートショートで書いてみるテスト

中学生もすなる読書感想文というものを星新一ショートショートで記してみるなり、ということで、奥さんに「書けるわけない」言われたので原稿用紙5枚(2000字)ぐらい書いてみるテスト。この位だったら30分位でさっと書けないとアカンよ。

絵本 星新一ショートショート | 星 新一
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星新一といえばショートショートSF作家として有名だが、ショートショート以外のものでは「人民は弱し 官吏は強し」という自伝っぽい本がある。星新一の父親が経営していた星製薬の話なのだが、色々官僚に虐められたという話だ。小学校の頃にSF文庫を読み、中学になってからはアシモフやらディックやら翻訳モノを読んでいた自分にとって、筒井康隆と星新一はちょっと特殊な日本のSF作家という存在で、真面目な印象を受ける星新一とおちゃらけた筒井康隆の文体は対象を為していた訳だが、実像のほうは星新一ほうが波乱な人で筒井康隆のほうが常識人というのが面白いところでもある。作家が内面にあるものを「小説」として表層化するときに、どのようにねじれていくのか(中二病的な言い方をすれば、「コンプレックス」なんだけど)の体現者二人という感じで見ていた。そんな中で、ショートショートという軽めであり、一見思想的なものを含まない星新一のもうひとつの顔として「人民は~」をよみ、再び星新一のショートショートに戻ると、ちょっと違った皮肉が文章の中に込められていることが分かる。同時代的には小松左京、横田順弥、半村良がいるのだけど(ええと、「幻魔大戦」の平井和正はちょっと特殊だし、「グインサーガ」の栗本薫も特殊ではあるので)、あまり作家像がみえないところに星新一のショートショートがある。そういう作家性のないところは、日経の星新一賞にAIをぶつけてみようというアイデアにも表れている。文体というものが作家性の大切な要素ではあるものの、ショートショートという中ではアイデア重視とそぎ落とされた文体の中で、要素だけが残された面白さに焦点が合わされているところにある。加えて言えば、星新一のショートショートの挿絵が一貫して和田誠だったところに奇妙な一致を見ることができる。短い文章は短歌や俳句のようなものではあるけれど、それよりも長く、しかし長編よりは短く、作家性を思わせるところが少ない判明、まさしく「星新一の描く」ショートショートである、と匂わせるような断然とした雰囲気が其処にはある。だから、実は、絵本になったショートショートは奇異ではありつつ、一見して半身を失った星新一ショートショートのような気もしないでもないのだが、いや、それはどうなのだろうか。まだ見知らぬ小説、まだ見たことのない挿絵に対して初めて面するとき、昔の星新一&和田誠ペアのショートショートを知らないのであれば、絵本となったショートショートは、実は本来の星新一のショートショートを真面目に眺める機会なのかもしれない。
実はクレイアニメのような図柄、そして短い物語の組み合わせは、数々の教育テレビ(Eテレ)の10分アニメを思わせる。ニョッキだとかポルタだとかそういうショートアニメにはちょっとしたストーリーが含まれていてちょっとした感動(子供向きだから?)が含められている。実は、これらのショートアニメは10年前以上に作れたものが多く、今のEテレのものを見ると解るけど、サイズが4対3になっている。新作が作られてないのか、それても旧作を発信することでコストを抑えているのかどうかは分からないが、これも初見であればそれが旧作であろうと新作であろうとあまり関係ない。始めてみる子供(大人でも)からすれば、それは興味を引く面白いお話である。それと同じく、絵本として再構成された(文章も再構成されているような気がする)星新一のショートショートは、大人向けのちょぴりとした皮肉(政治的な皮肉とかブラックジョーク)がある。禁じ手がいくつかあって、性行為と殺人と時事風俗は扱わなかったはずだが、「おせっかいな神々」には禁じ手を破っているらしい。ちょっと覚えていないけど。とりあえず、その手の良く分からないブラックジョークは絵本のほうでは省かれている。子供向けだし、内情が分からないとおもしろくないジョークを書き連ねてたって子供には面白くない。いや、大人でも面白くないのである。
だから、いろいろなバックグラウンドを知らなくても面白いSFショートショートが成立するというのがはなかなか珍しいことでもあり、うまいぐらいに3本用意したなとうならせるところがある。そう、ネタバレをすれば毛の生えたタコの話は、前知識がなくても奇妙で面白いし、ちょっぴり怖い感じがする。それは心理学的に怖いのか、ヒトが進化した中で必ず奇妙なものとして見えるのか、そこまでは突き詰めないけど、そういう作風が絵本の中からも出て来るのが星新一ショートショートの普遍性というものだろう。

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以上、これで30分ちょっと。40字50行で2,000文字です。

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