[ソフトウェア開発者の道具箱] 金の鍵

ソフトウェア開発者の道具箱 | Moonmile Solutions Blog シリーズの第3弾めは、情報発信の話。

研究開発でもプログラミングでもそうなんだけど、実際にモノを作っている時間と、モノを作ろうと設計としている時間がある。モノを作っているときは、集中している時間を多くして、出掛ける時間を減らしたり人と会う時間を減らしたりする。じゃないと「モノを作る」時間を捻出できない。逆に、モノを作るための設計とか計画をしているときは、適度に情報を取り入れたり出したりしないとうまく発想が回らない。情報を取り入れるところはすぐに分かると思うけど、「情報を出す」というところに手が回らないくてやめてしまう人が多いのだが、実は違う。情報を効率よく取り入れるためには、情報を出すという自分なりの整理が必要になる。

  1. 雑多な未知な情報を取り入れる。
  2. 自分の中の既知な情報と組み合わせたり比較したりする。
  3. 取り入れた情報に対して「本質」を外していないか、客観視するために情報を出す。

というサイクルが必要になる。よく、Twitter で書いた途端に誤字をみつけるとか、人と話した途端に理解が進むとか、コンピューターの横に熊のぬいぐるみを置いて話しかける、というアレです。

でもって、何らかの情報を出し入れしている間にだんだん固まってきて、ひとつに集約するためにモノ(プログラムコード)を形作っていくわけだけど、物理的なモノづくりと違って、プログラミングコードなんてのは作ったり消えたりするサイクルが非常に早いので、作る時間と考える時間を結構なタイミングでスライスさせても問題がない…ように見えるのだが、それでも交互に来ることには違いない。

「金の鍵」ってのは、情報を発信するときに内側から開けるための鍵です。外からの情報をシャットアウトするために鍵が必要なのは直ぐに分かると思うけど、内側から出るときに何故鍵が必要なのか?そう、先の設計時の思考で書いたように、情報の流入と流出のバランスと保ために、内側のほうにも鍵を付けておいて「常に外側に繋がっているという状態ではない」という状態を保つのに必要だということだ。「平田弘史のお父さん物語」に詳しく書いてあるのだが、呼吸と同じ。「吸」だけ続けても何も吸収できないので、「呼」があって循環させないといけない。これは仏教の呼吸法にもあるんだが、循環とか輪廻とかそういうところに根差している「思想」になる。だから、科学的に「本当に知識の吸収ばかりすると効率が悪いのか?」という証明は別として、温故知新な経験的なところから、情報の入力と出力のバランスを取れ、というのセオリーということになる。こんな風に、ブログとかで出力すると自分にとっても客観視ができやすくなるので、それなりの効用はある。

内部から外側にでるときに「鍵」を使うということは、情報発信をするときに、なんらかの形で情報を整理するということでもある。つまり、取り入れた情報をそのまま垂れ流すのではなくて、何がしかの理解をしたうえで流す/伝えるということですね。そうなると、安易なリツイートやまとめサイトの云々がアレなのが分かると思う。ひと呼吸おくということが、ちょうど「鍵」の役目をすることになって、それが「思慮深さ」を生むことなる。思慮深さは会話のテクニックでもあるのだけど、即答しないでひと呼吸置くとか、相手が息を吐ききった後に話かけるとか、そういうタイミングの話でもありますね。武術においても、相手が呼吸を吐いたときに当てるのが一番ダメージが大きいので、それを見る。同時に、呼吸をさとらせないという技もあれば、偽の呼吸を相手に伝えて惑わすという手法もある。これは武術に限らず、会議とか競合会社のアレとかにも使える。

そういうタイミングが鍵になる。

ちなみに、逆引き大全のほうは、1対多の情報発信の話になっているので、こっちはISO9000絡みの、「外に漏れるとまずい情報≒メンバ全体が知らなくても良い情報」あたりの鍵の話になってる。

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