最初に断っておくと、この手の生成 AI による小説書きについては是でも否でもありません。先の小説の解説を見れば AI で書いてあることは明白であるし、その戦略を明示されていて、アンフェアな感じはしません。YouTube で F5 キーを押して回転数を稼いでいるわけでもないし、偽装メールアドレスを使って ☆ を使って稼いでるわけでもなさそうなので、これはこれでよいのでしょう。
実際「数で稼ぐための創作論」という形で、カクヨムの数(多分、ランキングに上がるための☆の数)を稼ぐための手法としては、非常に有効な手段であると思います。
ただし、数を稼いだからと言って、商業デビューできるとは限らないのですが、ここでは☆の数だけに注目してみます。
ハーレクインロマンスというジャンル
AI に小説を書かせるときには、登場人物やある舞台背景を設定します。当該の異世界転生の令嬢という話であるならば、そこそこの設定を書けば十分です。できるだけ、現在の流行りの設定を書くのがよいでしょう。
昔(いまでもですが)、ハーレクインロマンスというジャンルがありました。ハーレクインロマンスは、アメリカのロマンス小説の一ジャンルで、女性向けに書かれた恋愛小説です。特徴としては、裕福で魅力的な男性と普通の女性が出会い、恋愛関係に発展するというストーリーが多いことです。登場人物は典型的なキャラクターであり、男性は強くて保護者的であり、女性は魅力的で感情豊かです。物語はしばしばドラマチックで、感情的な葛藤や障害を乗り越えることがテーマとなっています…という筋書きがあらかじめ決まっています。この解説文も Copilot の拾ってきたもので、Copilot 自身もよくハーレクインロマンスの構造がわかっています。
ハーレクインでは、導入部分がどうなるのか、展開がどうなるのかというページ数がほぼ決まっています。当時は、AI というモノがなかったので、ゴーストライターがたくさん集まって、次々と似たような小説を出しています。いわゆる、昼メロのドラマの視聴者をターゲットにしたアメリカの小説ですね。もう、40年程前からあるものなので、家庭の主婦を対象にしています。そして、毎回同じメロドラマが繰り返されるのです。
これ、面白いかと言うと、まあ、1冊だとそこそこ読めるようにできているのですが、5冊ほど買って読んでみてください。できれば、同時並行で読むのがお勧めです。同時並行で読むと、登場人物たちが、どのように恋愛をして、どの部分で何かの事件に巻き込まれるのか(ちょっと覚えていないので、事件があったかどうか定かではないのですが)、どのように解決してロマンスに陥っていくのかが、ページ数で決まっているのです。だから、どんな小説家、というかライターが書いても似たような小説ができます。構成にあわせた、量産品小説ができるのです。
この作戦は、なにもハーレクインに限ったものではありません。雑誌のゼクシィやバイク雑誌、フランス書房なども似た感じで作っています。私が好きだったのは 30 年前のティーンエイジャー小説なのですが、これは学園もので、ちょうど現在の異世界転生の学園ものに近い感じです。アメリカ高校生のダンスパーティのシーンがあったり、生徒会が出てきたりします。これも定番で、どの本を読んでも似たようにダンスパーティと生徒会が出てきます。まあ、3,4冊で飽きてしまうのですが、暇つぶしにはいいです。たしか、ハヤカワ文庫であったはずなのですが、今は見当たりません。これは、当時、各出版社が作っていて、結構シリーズ化されたんですよね。漫画でいえば渡辺多恵子の「ファミリー!」が近いです。「ファミリー!」自体は量産品ではないのですが、このようなスクール生活中心の物語が、ハーレクインのように繰り返し出版されていました。たしか、中高生が漫画しか読まなくなって、小説が激減した時期で、それを盛り返そうとしてアメリカの青春小説を輸入しはじめたのが発端だと思うのですが、まあ、すぐに廃れました。SF が売れない時期で、ハヤカワもこんなのに手を出したのか、と思った次第です。まあ、その後 SF が復興したんですけどね。
そういう意味では、異世界転生のラノベブームも似たようなものですが、異世界転生の場合は設定が多様化していることと、意図的に似せてはこなかった、むしろ設定を変えて差別化してきたところに特徴があります。
量産するという占い方式
ところがですね、「数で稼ぐ~」の展開としては、これを意図的に逆にしています。
つまりは、ハーレクイーンの時代に戻して、構成を同じにしたわけですね。
さらに、カクヨムの特性として、新作リストがトップページ等に出ることを使って、似たような設定でたくさんの連載小説を AI で作るようにしました。つまり、量産したうちの 1 本が当たればよいというスタイルです。これは「占い方式」で、相談者に適当に YES/NO で答えて、YES で当たっていた方だけを残していく方式です。たくさんの同型の小説をアップしておいて、当たりだけを残せばいいのです。Web テストの A/B テストみたいな感じです。
作者のページを見ると同時並行的に10本以上の連載小説が並んでいます。どうやら、日に38本位を同時にアップしているそうなので、新作のリストが埋まってしまうという苦情も寄せられています。
人が書いた場合にはさすがに 38 本も同時には書けないのですが、生成 AI では難しくはありません。ただし、人が内容を確認するとスピードが遅くなってしまうので、内容はほぼ確認していないと思われます。
そんな中で今回は、そのうちの1本がヒットして、総合ランキングの1位になったわけです。おそらく、たびたびジャンル別のランクには上がっていたと思うのですが(過去の☆を見ると、取れそうな感じはするので)、今回話題になったのは「総合1位」という話題性でしょう。
自動生成されているので、小説の中身は問いません。
ただし、小説を読んで☆を付けている人がいるわけで、それが人の書いた小説よりもランクが上になったという事実がここにあります。
まあ、作戦的には「AI で量産する」という人間業では無理ということをやっているので、多少反則な気もしますが、それは、将棋 AI が人間に勝った、みたいなものです。まあ、読者は人間なので、判断的にも人間が凌駕したともいえます。
自動生成の実践
仕掛けがわかったところで、実践をしてみましょう。
私自身は、AI による自動小説はあまり興味がないのですが、実験的にやります。以前、まだ ChatGPT 4 あたりが出たばっかりのころに設定を使って書いてみたのですが、あまり面白いものはできませんでした。最近では、結構、キャラ付けをすると面白いことができます。
文体に関しては、例えば「村上春樹風に」とか「星新一風に」とか「夏目漱石風に」とか結構できます。今回は「庄司薫風に」してみましょう。庄司薫は「あかずきんちゃん気を付けて」などを書いた芥川賞作家です。青春小説の走りみたいな形で、薫くんシリーズは 4 冊しか出ていないのですが、当時はエポックメイキング的なところがあって、誰もが教科書的に読んだものです。
時代は大学の学生運動の頃なのですが、皆が血気さかんな時期に自制して思考することを優先した青年の話ですね。いわゆる、学生運動や当時の社会思想的な小説家たちが「行動すること」を中心とした時代へのアンチテーゼみたいなものです。
手順としては、以下のように作っています。構成については、あえて、総合1位のものをパクってきています。これは、どの小説でも構いません。
1. 曲がり角でぶつかった少女に回復魔法を使ったら不治の病と盲目なのを治してしまってめちゃくちゃ懐かれてた(夏見ナイ) – カクヨム https://kakuyomu.jp/works/822139837599758883 から、全話を抜き出します。
2. NotebookLM に突っ込んで、マインドマップを作ります。
3. 登場人物のリストを抜き出します。
4. 設定や舞台背景を抜き出します。
5. 大まかな事件を抜き出します。
6. これらを元にして、SF 風に ChatGPT に仕立てて貰います。
7. 生成された文章を、さらに ChatGPT に庄司薫風に直して貰います。
※ 登場人物の名前は著者に敬意を示すために、そのまま残してあります。
※ AI 生成そのままなので、著作権はないんですけどね。すこし手直しすると、著作権が発生します。
できあがった、小説と途中の markdown ファイルは、NotebookLM https://notebooklm.google.com/notebook/9508ee51-4a21-42d4-bf6c-856cfc9274aa に共有しておきます。
ハーレクイーンのようにバリエーションを付ける場合は、SF的展開.md のように、古代風とか中世風とかで作ってください。事件もろもろは、適当に追加すれば ChatGPT が整合性をあわせてくれます。おすすめはしませんが「数で稼ぐ~」のようにカクヨムにアップしてもいいのですが、これは自己責任でお願いします。
これ、実験的には面白い試みではあるのですが、小説的に面白いかどうかは別ですね。
さらに、商業的にデビューを目指すのであれば、全面的な AI 生成はやめておいたほうがいいと思います。文章力がつかないし、構成力も借り物にしかならないので結果的に面倒くさいです。ただし、将棋 AI のように、論理的に突き進む場合(誤字がないとか、構成的な矛盾が出ないとか)は、AI のほうが向いています。私としては、AI とのペアプロというかペアで執筆がお勧めです。誤字とか構成チェックに AI を使うとか、ところどころの定型文で AI に書いて貰うとかしたらよいでしょう。
余談ですが、LLM のモデルとしてカクヨムの 100 万本の小説が抜き出されて、それを活用して、という噂話があるんですが、これは本当かどうかはわかりません。
そのモデルを使えば、確かにカクヨム読者に特化した文体と中身が出来そうな気もするのですが、先に書いたように「量産して1本だけ当たった」状態なので、あまり意味がないです。この場合、量産して全てを当てるか、1本だけ書いて1本当てる、パターンで使うのが正しいので、今回のように10本以上の連載のうちに 1本だけ当たったというのは、確率的に質が悪いです。
それに以下の ChatGPT に書いて貰ったものを見ると分かるのですが、いまの GPT5 だと、結構書けるんですよね。こうなると、わざわざカクヨムの小説を学習させる必要もないような気がします。
以下は、自動作成した小説の第1章をサンプル的に
第1章 転移とユウキの静かな願い
帝都の夜って、星が負けるんだよな(いい勝負する日もあるけど)。二つの衛星が雲の切れ目からのぞいて、軌道リングを牛乳みたいに縁取っている。俺は六畳ちょいのモジュールで、ぬるい合成コーヒーをすすっていた。重力は薄い、眠気は濃い、みたいな感じで。
俺――ユウキ・アスカワ。前世は日本の社畜で、定時は神話、終電は日常、っていう生活。で、ある晩に限って紙を拾おうと屈んだら視界が暗転した。ありがちな黒い画面のあと、あんまりありがたくない白い部屋。青白いイケメンがポテチ食べながら言うわけだ。「願いは?」って(そんな軽いテンションで訊く?)。
「穏やかに暮らしたい」。はい、反射で出た。戦わない、目立たない、誰にも使われない。要するに、静かで、勝手で、ちょっと疲れてる人の願い。彼は肩をすくめて、電子ノイズっぽい声で「加護を授与。生体ナノ群体、管理権限付与。君の手は癒やしの光になる」とか言う。いや、それ、穏やか要素どこ。
目を開けたら天井は白くなくて、金属と消毒薬の匂いがした。帝都軌道ハビタットの医療区画。手のひらに意識を寄せると、そこに“ざわめき”がある。見えない粒が、命令待ちの兵隊みたいに。恐る恐る擦り傷に触れると、金の粉塵みたいに光って、熱で皮膚が縫われた。
「……派手すぎ」
安堵より先に、それ。黄金って、とにかく目立つ。目立つって、つまり危険(この帝国では特に)。生体ナノ群体は軍事と政治のど真ん中に置かれる技術だし、俺が誰かの“所有物”になる可能性なんか想像しただけで、前世の偏頭痛が後頭部でうずく。
だから、決めた。——誰も見てないところでしか使わない。小さな傷だけ。血も涙も避ける。黄金は俺のためだけ。以上。
退院して渡されたのは、身分コード、住所モジュール、星港補給デッキの軽作業の紹介。帝国は新参者をいきなり実験台にしない(少なくとも表向きは)。俺は無表情の練習をして、荷役に混じった。
補給デッキは帝都の胃袋だ。肉、穀物、機械部品、誰かの手紙。コンテナはどれも金属の匂いがして、フォークリフトのホイールとマニピュレータの油が静かに歌う。遠心重力のわずかな傾きが足裏を撫で、時々、貴族仕様の白いコートが視界を横切る(襟の紋章で家柄が読めるの、何回見ても慣れない)。
俺は端っこで暮らす方法を覚えた。朝はドックの冷気、昼は肉屋の親父の端肉、夜は薄重力の部屋で旧地球の音楽を小さく。
「兄ちゃん、また端っこでいいのかい」
肉屋の親父は、俺の好み(脂多め)を勝手に覚えるタイプ。太い腕、笑うと目尻が消える。店はプロムナード寄りで、貴族も庶民も肉の前では平等に真剣だ。
「端っこが一番うまいんですよ」
「そういうの、わかる口だ」
冗談を返せるくらいには、暮らしが体に馴染んできた。手のひらの群体は賢くて、命令の粒度を落とせば光は抑えられる。小さな裂傷なら、皮膚の色がほんの少し温むくらい。誰も気づかない。俺は“傷を作らない”歩き方も練習した(これが意外と難しい)。
……でも、目を逸らせない時ってある。夕方、補給デッキの影で小さく泣く声。膝を破いた少年。血が透明フィルムに貼りついて、見てるだけで痛い。
「大丈夫か」
しゃがんで、手のひらをかざす。閾値は最低。発光はゼロ寄り。空気がほんの少し金色に濁って、痛みがほどける。
「……あれ、痛くない」
「気のせい。よくある」
立ち上がると、少年の目が一瞬だけ大きくなって、すぐ普通に戻る。礼を言って走っていく背中を見送りながら、俺は手を見る。光はない。昼夜サイクルは、少しだけ夕方へ傾いた。
目立たない。目立たない。目立たない。これは呪文。前世で生き延びた術が、今世でも通用するかのテスト(合格してほしい)。
ハビタットは巨大な円環都市で、内側に人工の空と木々、外側に星と軍艦。帰り道はいつも同じ。正面エスカレータは使わない。螺旋のメンテ階段、広告が少ない側道。世界から半歩浮いて歩くと、なぜか安心する。
その頃から、星港の“噂”が耳に入ってきた。近衛艦隊司令の一人娘――シルフィード公爵家の令嬢が、長らく神経インターフェース不全で視覚補助が効かない、とか。帝都医療局総出でも原因不明、とか。噂ってのは、たいてい最初の一文で充分。残りは聞かない(関わる未来、想像したくない)。
続きに興味があれば https://notebooklm.google.com/notebook/9508ee51-4a21-42d4-bf6c-856cfc9274aa を見てください。
補足 2025/11/01
AI 作家による大量投稿によって、新着リストが埋まるのでは? という懸念が X に上がっていますが、実際にはそんなことにはならないです。例えば、以下はカクヨムの「異世界ファンタジー」の新着リストになります。
このリストの新着時刻を見ると、
- 2025年11月1日 11:22
- 2025年11月1日 11:16
- 2025年11月1日 11:14
- 2025年11月1日 11:11
- 2025年11月1日 11:11
のように、10分間以内にも数件上がってくる様子で、1時間もあれば新着リストが一巡してしまう勢いです。しかも筆者は別々になった状態です。

つまりは、既にカクヨムの新着投稿では1時間で一巡するぐらいの流量があるので、AI 作家がちょっとやそっと入れたところで新着投稿のリストを埋めることはできません。もし、AI 作家が 1時間に1回以上の投稿をすればリストに載る程度のもので、埋めようと思うならば、1時間に40本位は上げないとリストは埋まらないでしょう。つまり、実質としてはひとりの AI 作家がリストを埋めるのは無理です。
もちろん、AI 作家が 10 人位でてきて、同じように 1 時間に 2,3 本ペースで up していったとしたら、新着リストは「複数の AI 作家」によって埋まってしまうかもしれませんが、それは、そのときになったときに判断すれば良いでしょう。少なくとも、運営側が判断する話です。現在のところ、傾向としては 1 人の AI 作家なので問題は少ない。しかも AI 作家だとしても、1 時間に 1 回程度の投稿であれば(24時間であれば 1 日 24 本まで投稿が可能です)、特に新着リストを荒らすことはありません。十分、許容できる範囲と思われます。
もちろん、それは実際に作家になりたい投稿者と☆の数だけが欲しい投稿者との混在になってしまうのですが、現状でも似たような感じなので、そこは AI 作家の問題とは異なるものです。
まあ、個人的に言えば、「あ、これ面白い」と思ったものが AI で書かれていたものだとしたら、ちょっと鼻白みますね。AI を活用して書いたのならばいいけど、全面的に AI に頼っているものを読むのは騙された感じがするので、二度と読まないと思います。
追記 2025/11/14
カクヨムから声明がでました。生成 AI に対してという訳ではないですが、過度な頻度での投稿の禁止です。
過度な頻度で作品やエピソードを投稿する行為はお控えください – カクヨムからのお知らせ https://kakuyomu.jp/info/entry/2025/11/13/170248
AI からの自動生成は禁止しないけど、あまり極端なのはやめてね、という具合ですね。当該のアカウントは BAN されていはないので、OK なようです。毎日更新は続けているので、それはそれで良いのかなぁと。
